引き続き、『日本が売られる』(堤 未果、2018)から引用します。
2016年4月1日。日本の農地を外国に売りやすくする法律が、ひっそりと施行された。
「農業協同組合法等の一部を改正する等の法律」、いわゆる「農地法改正」だ。
これまで日本では、農地の売買は直接そこで農業をする農業関係者にのみ許可されていた。
2009年の改正で一般企業も農地を借りられるようになったが、所有に関してはルールが厳しく、役員の4分の3が農業者で議決権の4分の3を農業者が持つ農業法人だけに限られ、所有する場合は役員の4分の1が毎年60日間農作業をしなければならない。
海外企業にとって、日本は農業に参入しにくい国だったのだ。(p99)
農地法改正によって、近年、日本の農地が外国企業にどんどん買われていますが、
農地とは単なる土地ではない。
領土であり水源であり、環境に影響を与え、日本人の安全保障を左右する重要な資産(p100)
です。
特に、エネルギー資源・鉱物資源のない日本において、農地は、他国に渡してはならないものの1つだと思います。
だが「日本を世界一ビジネスをしやすい国にする」という目標を掲げる安倍政権が、2015年6月に農林水産業を成長産業にする目標を入れた「日本再興戦略」を閣議決定し、農業に関係ない企業でも日本の農地を手に入れられるよう、大きく扉を開いてくれた(p100)
役員は農業者でなくてもよくなり、議決権を持つ農業者の必要数は4分の3から半数に減らされ、企業は50%の議決権を持てるようになった。役員の4分の1が年間60日間農作業に出なくても、役員以外の社員(部長や支店長でOK)を1人畑に出せは条件はクリアだ。(p100)
これなら外国人投資家がグッと買いやすくなる。
2018年3月23日。参議院農水委員会で、「外国人が日本の農地を所有することの問題」を指摘された齋藤健農林水産大臣は、きっぱりとこう反論している。
「わが国では、基本的に外国法人の流入はありません」(p100)
しかしながら10年以上前からすでに、中国企業による日本の土地爆買い問題が指摘されていたことからも分かるように、農地においてもその可能性が高いと思います。
国内の河川の70%が汚染されている中国では、水資源の確保が政府の緊急課題になっている(p101)
ため、水資源のある土地がどうしても欲しいのだろうと思います。
本来であれば日本の貴重な資源である農地を、外国企業が買えないように法律で守る、買えるとしても規制を設けるなどして、日本政府としては領土を守るのが基本です。
しかしながら、日本政府はあろうことか外国企業が農地を買いやすくなるよう法律を改正しました、、、
世界では今、枯渇する〈食糧〉と〈水〉をめぐる争奪戦が起きている。過熱する奪い合いは巨大な利益を生み出し、生命に直結したものほどマネーゲームの商品価値は高い。(p101)
特に、食糧と水どちらも深刻なレベルで不足している、中国企業による農地の買い占めは世界中で拡大しているようです。
中国企業群は、開発途上国の農地を買い占め、最安値の労働コストで作った遺伝子組み換え作物の輸出で莫大な利益を上げるという米アグリビジネスを手本にしながら、猛スピードでその後を追い上げている(p101)
寡占化が進む世界のアグリビジネスは今、米中独の3か国がトップの座を争っている。
2017年に経営統合した米ダウ・ケミカル社と米デュポン社、2018年に米モンサント社を買収した独バイエル社、そして2016年にスイスのシンジェンタ社を買収した中国国営化学会社の中国化工業団だ。(p102)
農薬で世界トップ、種子で世界3位の地位を誇り、90以上の国と地域でアグリビジネスを展開するシンジェンタ社を手に入れた中国は、これから世界市場進出にさらに力をいれてゆくだろう。(p102)
中国政府は、自国企業に海外の農地買収を奨励していて、
中国企業による外国の農地取得件数は、アフリカなどの途上国からアメリカやフランス、オーストラリア、カナダや日本などの先進国まで、世界各地で急増中(p102)
だそうです。
また、農地を買った中国企業は、1980年代にアメリカで使われたビジネスモデルそのままに、
労働者も流通も消費者も、全てセットでビジネス計画に組み入れる(p102)
大企業が農地を買い占め大規模農場化し、元からその土地にいた家族経営農家をフランチャイズ形式で雇い、最安値の労働コストで生産させている。生産だけでなく、加工も流通も全て傘下にある子会社が請け負う、という最大限効率化されたシステム(p103)
を使い、
農産物の市場価格が下がったり、土地が劣化して使えなくなるなど、採算が取れなくなった時は、速やかにその国から撤退すればいい。(p103)
というスタンスを取っているようです。
外国資本がアグリビジネスで農地を爆買いしているブラジルでは、株主がブラジル国外にいる外国企業による土地への投資が、環境を破壊し、家族経営農家を廃業させ、株式会社の大規模農場とそれ以外の国民の経済格差を拡大させることから、大統領府が「外国人土地規制法」の改正を急ピッチで進めている。(p103)
そうです。
また、
すでに耕作地の2.5%、外国資本による農地取得の4分の1が中国企業に所有されているオーストラリアでは、中国企業が土地を買い占めて大規模なワイン醸造所を作り、そこで生産したワインを中国人のバイヤーが全て買い上げ、「オーストラリア産ワイン」の好きな中国人に売っている。(p103、4)
そうです。
中国人の中国人による中国人のためのアグリビジネスは、地元にお金が落ちない上に、現地の農家がことごとく潰され、集約された大規模農場は、自国の食糧供給を脅かす安全保障問題に発展(p104)
しているそうなので、山岳地帯が7割以上の日本列島であっても、農地を買い占められている現状では似たような問題が起こる可能性があります。
外国からの投資拡大を目指し、安易に外国企業による土地購入を許してしまったオーストラリア政府は慌てて規制強化に動き出し、前述したフランスを始めとする欧州の国々も後に続き始めている。(p104)
と、他国は外国企業による土地購入に規制をかける方向で進んでいます。
が、日本政府はそうした方向とは逆行し、外国企業による土地購入を規制緩和しています、、、
日本は、
外国人に土地所有権を与え、一度取得した土地は何にでも自由に使わせてくれる(p104)
ことや、
法人を設立してスタッフを2人おけば「管理者ビザ」がおり、10年たてば、永住権まで取得できる(p105)
ためか、主に北海道、沖縄、対馬、五島列島、佐渡などで、中国資本や韓国資本による土地の買い占めが続いているそうです。
ここ5、6年で外国人による土地購入を規制する自治体も出てきたが、その分今回の法改正で、農業者でなくても簡単に買えるようになった農地に矛先が向いてゆくだろう。(p105)
というように、今後も規制しない限り、外国資本による農地の買い占めは続く可能性が高そうです。
本来であれば安全保障上、売ってはいけない土地というものを定めておく必要があると思いますが、今のところ日本にあるのは、
国防上、重要な地域については外国人の土地所有を禁止/制限できる法律、「外国人土地法」(大正14年公布:法律42号)(p105)
くらいで、他国のように外国資本による土地購入を規制している、と言えるような法整備はなされていないのが実情です。
しかも「外国人土地法」は、
内閣がやると決めて「政令」を出さないと運用できない(p105)
ため、実質無いようなもの、、、
また、昨年6月に成立し、今年9月に施行される「土地利用規制法」(重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び規制等に関する法律)でも、外国資本による土地買い占めを規制できるかは未知数です。
1994年に加盟したGATSにおける「日本人と外国人の待遇に格差を設けてはならない」という国際ルールにより、GATS加盟時に外国人の土地所有を禁止しておかなかったために、
安全保障上重要な土地において、外国人の土地所有を禁じるためには、日本人の土地所有も禁じることになってしまっているからです、、、
しかも、現状における日本列島は、1990年代から低迷している地方経済のため、外国資本による土地購入を促している印象さえあります。
実際、「誰も買ってくれないような土地を、そこそこの値段で買ってくれるなら売ってしまいたい」という気持ちを、公共事業による立ち退きを待つような農地所有者なら、一度は抱いたことがあるはずです。
また、「日本企業に買われるよりも外国企業に買われるほうがマシ」という認識を抱く労働者もいることから、一部日本企業における賃金待遇の劣悪性も問題なのかもしれません。
しかしながら、特に中国資本による土地買い占めは、中国共産党による指示に基づいて行われているため、現状では、日本の領土の中に中国の領土(米軍基地や領事館と同じような治外法権地域)ができてしまっているような状態、、、
そんな中国資本(中国共産党)による農地買い占めが今後も拡大することになれば、東トルキスタン(新疆ウイグル)やチベット、モンゴル、香港のように、
日本でも言論の自由や表現の自由、思想の自由などあらゆる自由が無くなり、人権侵害や文化の剥奪、民族浄化という名の非人道的な迫害行為を受ける可能性があります。
日本政府は、日本国民だけでなく日本の領土さえ守る気がないようですが、、、
日本が中国に侵略され、日本という国が無くなり、日本人が弾圧されるという未来を避けるためにも、日本政府に対し、外国資本による農地を含めた土地購入の規制を、継続して求めていく必要性を強く感じています。