種子法廃止…在来種・固定種のタネを守るために今できること

2018年4月、主要農作物種子法(通称、種子法)が廃止されました。

農林水産省は、法的根拠を失った種子生産に国の予算がつかなくなること、そしてこれまで得た種子生産に関する知見を民間企業に渡すことを、各農業従事者に通達しているといいます…

種子法は1952年に制定された法律で、米・麦・大豆の3種類を対象として、奨励品種の選定や原種の生産・供給に対し、各都道府県が責任を持ち、そこに国が予算をつけることを定めたものでした。

種子法と似た名前の法律に「種苗法」がありますが、この法律は、全ての農産物を対象として新品種を育成した人や企業の知的財産権を保護する法律で、いずれも品種登録された品種のみが関係しています。

品種登録とは、植物の新品種を育成した人が品種名をつけて国に提出し、審査を経て登録されると、種苗法によって「育成者権」が生じます。種苗の生産・販売を独占できるほか、種苗の利用を他人に許諾して利用料収入を得られます。果樹など永年作物は30年ですが、それ以外は最長25年で登録が切れるそうです。

種子法廃止は、国が食料主権を放棄したという点で???と思いますが、『自然栽培 いまこそ知りたい「タネ」の本当のこと。』(農業ルネサンス、2018)には、

種子法と種苗法は、共に公的システムに関する法律なので、自家採取されてきた在来種などのタネは関係しないと書かれていました。

ですが、日本におけるモンサントやデュポンの台頭を見ていると、今後、海外から遺伝子組み換え種子が大量に入ってくるのではないかと懸念します…

また、諸外国で使用禁止になったグリホサートを、いまだに当たり前のように使用し、世界の流れと逆行する農政をとり続けている国なので、信用できないのもあります。

他にも、種子の安定供給や予算確保について不安視する声が上がっています。

そんな危機的状況で国が種子生産を守らないなら…と、各県で種子生産を守るための主要農作物種子生産条例が次々と制定・施行されています。

2017年時点で制定・施行済みの県は、兵庫県、新潟県、埼玉県、山形県、富山県の5県。

兵庫県は酒造のための酒米を守るため、新潟と山形県は米処として、埼玉県な農業県として、富山県はコシヒカリを筆頭に米の種子生産を守るために、早い動きをとったそうです。

この5県に続いて、北海道、長野県、岐阜県、福井県、宮崎県が、主要農作物種子生産条例の2019年中の施行を目指して動いているそうです。

その他の県では、栃木県、千葉県、福岡県が準備中だそうです。仮に今後20県を超える都道府県で同条例が作られれば、国は予算措置をせざるを得ないだろうと言われています。

さて、そんな状況を知って自分にも何かできることはないかと考えていたときに、『自然栽培 いまこそ知りたい「タネ」の本当のこと。』(農業ルネサンス、2018)で、「私たちは、どのように行動していけばいい?」の項目を読みました。

そこには、

  • 自分にできる方法で、自家採取や野菜づくりをしてみる
  • タネを継いでいる農家とつながり、生産物を購入して支える
  • 農薬製造ではなく、本業の「タネ屋」としてタネを供給している種苗会社(サカタのタネ、タキイ種苗)を大切にする

と書かれていて、自分にもできるかも?と思いました。

日当たりの悪い自宅ベランダでの野菜づくりは、これまで幾度となく失敗していますが、今後日当たりの良い土地での再挑戦を目論んでいます。

それまでは、できる範囲で在来種・固定種の生産物を買っていくつもりです(他の危険もあるので、なかなか難しいことではありますが…)。

この本で印象に残った内容の1つに、「タネは所有するものではなく継いでいくもの」という考え方があります。

そこには植物と人類の長い歴史の中で、経済効率や利益など人間都合で考えるのではなく、タネを中心に考えていくことが必要なのでは、という視点が提示されていました。

農業従事者が自分の農地に合ったタネを、自由に選び育て継いでいく流れが当たり前に守られるためにも、紹介されていた行動を1つずつ実践し、できるだけ継続していこうと思います。