『日本が売られる』③日本政府にとってはインフラも利権でしかない

まだ本文の1/10くらいしか振り返っていないにも関わらず、怒りと虚しさを覚える『日本が売られる』の内容、、、

初めて読んだときも、悲惨な現実を受け入れるのに時間と気力を要しましたが、今読むとより一層絶望感が増してきます、、、

それでも引き続き、『日本が売られる』(堤 未果、2018)から引用します。

2018年5月、企業に公共水道の運営権を持たせるPFI法を促進する法律が可決する。まずは自治体が水道民営化しやすいよう、企業に運営権を売った自治体は、地方債の元本一括繰り上げ返済の際、利息が最大全額免除されるようにした。

日本の自治体はどこも財政難だ。借金返済軽減という特典がついてくるなら、今後は積極的に水道民営化を選ぶだろう。その際自治体と企業がスピーディに契約できるよう、今までの面倒なステップもなくし、ごく簡単な手続きだけでOKにする。「水道料金」は、厚労省の許可がなくても、届けさえ出せば企業が変更できるようにした。(p30)

コスト削減を目的とするPFIですが、PFIを導入して事業破綻している事例がありました。

①事業を行っていた民間事業者が経営破たん・撤退したため、自治体が施設を買い取らざるを得なくなった。(例:北九州市ひびきコンテナターミナル)

②事業見通しが甘く、公共によって実施するよりコストが高くなり契約を解除した。(例:倉敷市廃棄物処理設備ガス化溶融炉、福岡市タラソ福岡など)

③当初から赤字が続き、契約解除に多年の負担を要しながら、さらに契約解除の際に市が特定目的会社(SPC)に損失補償金を支払った。(例:近江八幡市立総合医療センターなどのいくつかの病院)

④収益を確保するため、事業に従事する労働者の賃金が低く抑えられ「官制ワーキングプア」ともいえる事態を引き起こした。

(参照:https://www.komei.or.jp/km/kei/2013/10/08/pfi導入の問題点/)

だいたい、インフラである水道の料金を企業が勝手に変更できるのもおかしな話です。

水道料金は自治体によって異なるため(自治体によって数倍の差がある)、他の自治体に比べて安いからと、民営化で料金が値上がっても気付かないかもしれません。

が、そこに水道設備の更新費用だけでなく、株主や役員への法外な報酬、法人税や内部留保まで上乗せされていたら、支払いに納得がいかない庶民が大半ではないでしょうか?

実は日本の水道が電気と同じ「原価総括方式」であることは、あまり知られていない。水道設備の更新費用のみならず、株主や役員への報酬、法人税や内部留保なども全て「水道料金」に上乗せできる。人口が年々減っているのに、今もダム建設が止まらず水道料金が上がり続けるのはこのためだ(電気料金は2020年で総括原価方式を廃止予定)。(p30)

水道料金については自治体が料金の上限を設定できるようになっている、とのことですが、

水道は1社がその地域を独占できるため、設備投資の回収や維持費と称して値上げの正当性を企業から訴えられれば、

例え企業が設備投資していなかろうと、劣化したままの水道管を使い続けようと、自治体は値上げに同意せざるを得なくなります…

口うるさい議会の反対で足を引っ張られた大阪市の二の舞にならぬよう、「上下水道や公共施設の運営権を民間に売る際は、地方議会の承認不要」という特例もしっかりと法律に盛り込まれた。これで水道の運営権を売買する際、議会は手出しできなくなる。(p31)

諸外国が水道事業を民間委託して軒並み失敗しているのをみれば、日本でも同様のことが起きるのは目に見えています。

どこもコスト削減目的で民間委託したものの、再び公営化しているのですから…

日本政府は、外資への莫大なカネを上納するため、および各自治体を更なる赤字財政に引きずり込んだ挙句庶民に重税を負わせるために、わざと民営化させようとしているとしか思えません。

それは災害時に水道管が壊れた場合の修復も、国民への水の安定供給も、どちらも企業ではなく自治体が責任を負うことになっている点からも明らかです。

日本政府は水道事業をインフラとしてではなく、委託された企業が儲かる利権としか見ていない…

日本の法律では、電気やガスは「電気事業法」「ガス事業法」という法律のおかげで、ガスや電気の安定供給の責任はしっかり事業者に課せられている。だが水道だけは「水道事業法」が存在しないのだ。それをいいことに今回の法改正では、その責任は事業者から自治体につけ替えられた。

これなら企業は自然災害大国日本で、リスクを負わず、自社の利益だけを追及すればいい。(p31)

こうして宮城県をはじめ、いくつかの自治体では既に水道事業を民間企業へ委託もしくは運営権を売却し始めていますが、10年後、諸外国で起きたような悲惨な事態になってないことを祈るばかりです。

2018年7月、水道民営化を含む「水道法改正案」が衆議院本会議で可決されたにもかかわらず、ほとんどの国民はこの重大な法律に気付きませんでした。

本来なら新聞の一面にデカデカと乗り、テレビで大きく取り上げられるはずのこのニュースが、紙面のどこにもなかったからだ。日本中のマスコミは足並みを揃えたように、オウム真理教の麻原彰晃と幹部7人死刑執行の話題を一斉に流し、日本人のライフラインである水道が売られることへの危険について、取り上げることはなかった。(p32,33)

日本政府は、庶民にとって重要な法案が審議入り・可決する場合には、そこから注意をそらすためにあらゆる手口を使いますが、この時も同様でした。

しかしながら、「民営化」と「規制緩和」で売られたのは水道だけではありませんでした。

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