『沈みゆく大国 アメリカ』国民皆保険制度を破壊するマイナンバーカードと保険証の一体化

数年前から読みかけのまま放置していた、『沈みゆく大国 アメリカ』(堤未果、2014)をやっと完読。

堤氏の本は分かりやすいのですが内容の重いものが多く、、、今回も気分転換しながらでないと読めませんでした。

さてこの本では、

医療保険会社、製薬会社、医療機器メーカーの利権を拡大させる政策=ユニバーサルヘルスケア制度(通称:オバマケア)によって起きた、

アメリカの医療保険制度の実態が書かれています。

オバマケアとは、全アメリカ国民に民間医療保険加入を義務づけた医療保険制度改革法案のこと。

日本政府が今、マイナンバーカードと保険証の一体化を強行していますが、

それが行われるといずれ訪れてしまう日本の未来が、以下です(かなり端折ってますが)。

まず、全国民に医療保険加入を義務付けますが、高額な医療保険会社の独占状態のため、企業は企業保険を維持できず、パートタイム労働者が激増。

パートタイム労働者は民間保険に加入しなければならないのですが、

前述したように、高額な医療保険会社しかないため保険に入れず、仮に保険料が安価な公的医療保険に入れたとしても、受けられる治療には想像以上の制限がつきます。

そうした変化に伴い、医療費の自己負担分が激増。

結果、中間層が医療破産に追い込まれるだけでなく(医療破産はアメリカの破産事件の6割を占めていると言われている)、

メディケアやメディケイドなどの公的医療保険加入者は、病院や医師が診れば診るほど赤字になるため、診てもらえる病院や医者自体がほとんどいない状況に。

さらに、55歳以上でメディケアを受給している場合は、資産回収法によって死亡時に自宅などの資産を回収される仕組みになっています。

医療費が無料になるからと最貧困層を無理やり保険加入させては借金を負わせる、

サブプライムローンと似た構図が起きているのです。

病院も赤字経営になる所が大半となり、開業医は激減して勤務医が増えますが、

医師は、患者の加入する民間保険会社に保険適用範囲を聞いてからでないと、治療を決められません。

そうした診療範囲の制限だけでなく、事務業務や医療訴訟の激増に伴い、医者は自殺率1位の職業に。

こうしたオバマケア政策で一体誰が得をしたのか?

それは、税金で支払われる薬代が増える製薬会社の株価上昇を見ると一目瞭然。

患者のためではなく、

医療保険会社、製薬会社、医療機器メーカーの利権を拡大させる医療が行われているのがアメリカです。

こうした医療で起きた流れは、1920年代以降アメリカで進められてきた、

石油、農業、食、教育、金融、ヘルスケアなどの各分野で行われた規制緩和政策と同じで、、、

規制緩和と赤字が増えても紙幣をどんどん刷る政府によって、

公営(国営)といいながら、実際には民間企業に公的予算を流す仕組みが確立しています。

結果、少数のグローバル企業が独占支配する世界になっているのです。

TPP協定締結以降そうした流れが日本でも、

農業、食、小売り、教育、自治体、医療などの分野で次々と進められ、

日本を、アメリカと同じグローバル企業が独占支配する世界へと変えています。

最近では、水道民営化を決めた自治体があるようですが、、、

命に関わる分野を民間しかも外国の会社に売るなんて、住民の命を軽視しているとしか思えません。

ただ、今の日本で起きていることは、過去のアメリカですでに起きたこと。

日本政府がどのような社会を目指しているのか、なぜ今〇〇政策を強行するのかは

この本を読むとよく分かります。

マイナンバーカードと保険証の一体化は、形だけは残っても国民皆保険制度を破壊し、

結果、アメリカで起きているような、医療費の高額化や医療破産を招くことが予想されます。

これまで使い続けてきた命に関わる薬が高額化すると、医療破産する人も出てくると思います。

世界40ヵ国が導入する日本の制度、国民皆保険制度はこれまでなんとか解体されずにきましたが、

当たり前のように手にしている「国民皆保険制度」について、正確に理解している人はとても少ない。(P183)

ため、そこに隙が生まれ、アメリカ政府からの圧力で、日本政府は制度の解体を目論んでいます。

もしも国民皆保険制度が解体されてアメリカ式になってしまったら、

想像を絶する医療費の高騰を目の当たりにする可能性が高いです。

堤氏が取材したアメリカ在住医師の、

「今の医療保険制度を、空気のように当たり前にあるものだと思わないことです。制度というものは、一度奪われると取り戻すのは本当に大変ですから。奪われないためには、自分の国の医療制度くらいは最低限知っておくことです。(略)」(p201)

という言葉が重いです。

他の政策でもそうですが、

ある政策が行われて誰が得するのかを考えたとき(どこへ税金が流れるのかを見たとき)、

それが大半の国民ではない場合(特に、政府が国民にリスクを説明しない場合)、

その政策によって大儲けする業界がいて、そこからの圧力がかかっている政策だと思い、注意しています。

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