上記の続きを書こう書こうと思いつつ、余裕がなかったことと、本の内容が重すぎて読み返す気持ちになれなかったのとで、、、ずっと後伸ばしになっていました。
それが仕事を辞めて、まとまった時間と精神的余裕ができたため、前回から随分と時間が空いてしまいましたが、続きをまとめておこうと思います。
今回の内容は、
に付け足す内容です。『日本が売られる』(堤 未果、2018)から引用します。
種子法の廃止
1952年以降、種子は種子法によって、「日本人の公共資産」として国の責任で大切に守られてきました。
農産物の種類が多いことは、国家にとって食の安全保障に関わるリスクヘッジとして有効だ。万が一、台風や疫病などでコメがやられても、他の地域に別の品種が生き残っていれば、主食が手に入らないという国レベルの惨事は防ぐことができる(p39)
という形で、食料を輸入に依存してはいるものの、自然災害大国かつ島国である日本では、国内で生産している農産物の種類の多さが、食の安全保障に繋がっている面がありました。
江戸時代に数回、冷害による飢饉が起きましたが、今後、日本列島全土がそうした被害に見舞われた場合、農産物の種類が少なくなればなるほど、食糧難に陥る危険性が高まります。
また、気候変動が大規模であればあるほど、他国でも同様に農産物の不作が予想できるため、その国での食糧確保のためにと、食糧は工業関連品などに比べて収益が少ないために、他国から輸出してもらえない可能性があります。
結果、お米の価格が高額化して買えなくなるだけでなく、食糧自体が尽きてしまう危険があるのです。
そうならないためにも、安い公共種子を今後も守る必要があったのですが、2018年に国は種子法を廃止し、その責任を放棄してしまいました、、、
公共種子を失うことによる危険を察知した都道府県では、種子を守るために種子条例を制定・施行し始めています(現在、種子条例が制定されているのは、28道県)。
農業競争力強化支援法の導入
種子法廃止とほぼ同じタイミングで、2017年に作られたのが農業競争力強化支援法です。
これは、これまで各都道府県が汗水垂らして開発した知的財産である「公共種子の開発データ」を、求められれば外資を含む民間企業に無料で提供しなければならない、という極めて危険な法律です。
これはTPP第18章(知的財産の章)に沿って制定された法律で、売国政治家と売国官僚、売国企業による計画的犯行だと思います。
今後、「公共種子の開発データ」を民間企業に提供しないためには、各都道府県が条例で厳しく規制するしかありません。
種苗法の改正
さらに、2020年に行われた種苗法の改正によって、これまで農民が当たり前の権利として持っていた自家増殖が禁止されてしまいました。
自家増殖とは、買ってきた種苗を使って、自分で栽培した種や苗を次のシーズンに使うこと。
今までは、これが一部を除いて容認されていました。それが種苗法の改正によって、一部を除いて原則禁止へと変わってしまったのです。
これが今年4月に導入されると、農家は自分で種子を採ることができなくなり、結果イラクのようにグローバル企業によって食の主権を奪われ、食が高額なものになりかねません。
イラクでは、種子法廃止と自家増殖禁止により、グローバル種子企業が次々に在来種の種子を品種登録し、農家は、主食の種子まで企業から高価格で買うしかなくなってしまったのです。
食が高額化するだけでなく、食の安全保障も崩れる
どうやら種子法廃止、農業競争力強化支援法、種苗法改正は3つでセットとなっていて、これまで農家が当たり前に持っていた権利を、アメリカやドイツのグローバル企業に奪われるもののようです。
その結果、日常的な食が高額化するだけでなく、食の多様性が失われることで、自然災害大国かつ島国である日本では、食の安全保障が奪われる危険性があります。
そうやって農業がグローバル企業に支配されてしまえば、イラクのように、日本の食も崩壊してしまうでしょう、、、
イラク戦争のもう一つの目的がアグリビジネスだったという事実は、ほとんど知られていない。(p44)
という著者の言葉が、それを物語っています。
経済の原理に乗せられないものは、国で守らなければいけない
本来、農業も、水道と同じように命にかかわるものなので、国が率先して守るべきものであり、経済の原理で考えてはいけないものです。
それを「手間や時間、コストがかかるから民営化したほうがいい」というのは、税金を適正分配したくない国や企業、投資家の論理で、国家の未来や国民のことを無視した考え方です。
安くてよく効く薬が消え、高くて効かない薬ばかりが流通するようになった薬の歴史を見て思いますが、、、
売れるけど危険で高額な種子だけが流通し、利益は少ないけど安全で安価な種子が消える未来を迎えてはいけないと思います。
種子法の廃止、農業競争力強化支援法の導入、種苗法の改正から見える、国民が飢え死にしようが関係ないという国のスタンスからは、国が、国民ではなく外資を含む大企業やアメリカ投資家中心で動いていることが分かります。
国が国民の食を守る責任を放棄したことで、現在、都道府県レベルで日本の食を守る動きが進んでいますが、どこまでグローバル企業を規制できるのかは未知数です、、、
『日本が売られる』を読んでいると絶望感しか生まれず、暗い気持ちになりますが、、、
この列島で生きる未来の子どもたちのために、自分が今できることを、コツコツと地道にやっていくしかありません。