の続きです。
引き続き『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(矢部宏治、2014)から引用します。
前回、国連憲章にある敵国条項がいまだ有効であるがために、
国連憲章第107条にあるとおり、米軍による軍事占領状態が、独立後70年経った今でも続いている
と書きました。
しかしながら、それ以外にも米軍による軍事占領状態が続く根拠となるものが存在していました。
それが、1952年に発効されたサンフランシスコ講和条約です。
ポツダム宣言の第一二項では、
「占領の目的が達成され、日本国民自身が選んだ平和的な傾向をもつ政府が成立したら、占領軍はただちに撤退する」(p218)
ことになっていました。
そして、サンフランシスコ講和条約第六条にも、
「連合国のすべての占領軍は、この条約の効力が発生したあと、なるべくすみやかに、かつ、いかなる場合にも九〇日以内に、日本から撤退しなければならない」(p218、219)
と書かれていました。
しかしながら、同じ条約の同じ条の後半に、
「ただしこの条文の規定は、二国間で結ばれた協定〔=日米安保条約〕による外国軍〔=米軍〕の駐留をさまたげるものではない」(p219)
と書かれ、日米安保条約による米軍駐留はその例外とされていたのです。
これまで沖縄に住む人々は、
米軍基地による人権侵害についてとりあげてほしいという要請を、国連人権理事会に対して何度もおこなって(p224)
きましたが、
国連が沖縄の米軍基地問題をとりあげる場合は、(中略)いつも人権理事会ではなく、国連人種差別撤廃委員会による「人種差別についての懸念表明」という形になっている(p224)
そうです。
それはつまり、
日本の講和条約(平和条約)をめぐる問題については、国連憲章は効力を発揮しないので、沖縄の米軍基地問題について、いくらそれが人権を侵害していても、国連人権理事会はアメリカ政府に対し勧告をおこなうことはできない。(p224)
ということであり、
現状を放置していることは、沖縄人(琉球民族)という「人種のちがう民族」への差別にあたるとして、日本政府に対し勧告することはできる。(p224)
が、日米安保条約による米軍駐留が行っている沖縄の人々への人権侵害を、国連で取り扱うことは不可能ということなのです。