幼少時代住んでいた場所は山の中でしたが、そこには野良犬がたくさんいました。さすがに今はないと思いますが、当時は小学校への通学中に野良犬が一緒についてきたものです。
なぜそんな状況になっていたかといえば、何らかの事情で飼えなくなった飼い主が、他地域から車で犬を連れてきて私の住んでいた地域に捨てていくからでした。当の犬は捨てられたことで傷付いたり、先に住んでいた野良犬との縄張り争いで凶暴化したりして、地域の子どもからは怖がられていました。
ただ保健所に通報しても殺傷処分されるだけなので、子どもながらに犬を捨てて行く人に対して嫌悪感を覚えていました。様々な事情があるにせよ、捨てるなら最初から飼わないか、飼っても避妊・去勢手術をしておくなど飼う側としての責任を果たすべきだと思ったものです。
そこで思い出したのが、江戸時代に「生類憐みの令」を出した5代将軍・徳川綱吉。以前は評価の低い将軍でしたが、最近になって少々様子が変わってきているようです。
私が受けた義務教育では、「生類憐みの令」は犬が人以上に特別扱いされるおかしな法令という内容で、その法令を出した徳川綱吉もおかしな将軍という扱われ方しかされていませんでした。
が、実はこの法令、犬だけでなく当時酷使されていた馬などの動物全般を保護する目的もあったそうです。実は当時の犬は、武士による試し切りによって傷だらけだったといわれていて、また馬は馬で人間のために酷使されていたらしく、酷い環境下で生育されていたことも多かったそうです。そんな状況を改善させるために、徳川綱吉は「生類憐みの令」を出した経緯もあったとのこと。
またそんな動物愛護だけでなく、当時当たり前のように行われていた捨て子や堕胎を禁止したり、ほったらかしにされていた傷病人を保護したり、囚人の境遇を改善したりするなど、社会に人権意識をもたらす効果もあったそうです。ただこの「生類憐みの令」、江戸から離れた地方ではあまり守られていなかったようなので、地域によって状況が異なるかもしれません。
しかも、いつからかエスカレートして変な方向へいってしまったり、他に理不尽な差別も始めていますから、やっぱり綱吉はおかしな将軍だったといえるかもしれません。
さて、そんな綱吉の異常な犬崇拝は行き過ぎにしても、犬やその他動物を飼えなくなったから捨てる人が多い現実には、かなり疑問を持ちます。それで思い浮んだのが、日本社会の人権意識の低さ。
「人権意識が低い=動物を大切に扱わない」社会と決めつけるのは早計かもしれませんが、いまだに犬や猫などを狭いケージに閉じ込めて販売しているペットショップを見かけると、あながち的外れでもない気がします。
引っ越しを繰り返すと、同じ日本だとは思えないような独特の価値観や固定観念を知ることがありますが、「人権意識が低い」ことについてはだいたいどの地域でも共通しています。
そんな人権意識が低い社会では人間さえ大切に扱わない・扱えないのですから、飼っている犬やその他動物を平気で捨ててしまう人が多いのも無理ないのかもしれません。
もしかすると「人権意識が低い=自然と共存して生きる意識が高い」というプラス面もあるのかもしれませんが、そのために動物を犠牲にし続けるのは間違っている気がします。