これまで『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(矢部宏治、2014)から、
日本にある米軍基地に関する内容を引用させてもらいましたが、
今回からは日本にある原発に関する内容も引用します。
前回、大日本帝国憲法では三権分立といいつつも、
天皇の威を借りながら、司法、立法とも、行政である検察や官僚が支配し、
それが戦後、 天皇+米軍 による権力構造へ代わり、
砂川判決によって日本国憲法が、国の最高法規として機能しない法的構造となり、
さらに昭和天皇が亡くなった後は、 米軍+官僚 という権力構造へ代わったと書きました。
そうした権力構造を強化することになったのが、密約です。
アメリカ政府との交渉のなかで、どうしても向こうの言うことを聞かなければならない、しかしこれだけはとても日本国民の眼にはふれさせられない、そうした最高度に重要な合意事項を、交渉担当者間の秘密了解事項として、これまでずっとサインしてきた(p65)
それが、密約とよばれるものですが、
そうした密約の数々は、国際法上は条約と同じ効力をもっています。(中略)
約六〇年にわたって、そうしたウラ側の「最高法規」が積み重なっている(p65)
というのです。
こうした法的構造の存在を知ると、
「なぜ沖縄や福島で起きているあきらかな人権侵害がストップできないのか」
「なぜ裁判所は、だれが考えても不可解な判決を出すのか」
「なぜ日本の政治家は、選挙に通ったあと、公約と正反対のことばかりやるのか」(P65)
がようやくわかってきます。
沖縄で米兵による少女暴行事件や殺人事件が起きて、犯人には事実上の無罪判決が下されたこと、
赤木俊夫さんに関する裁判所判決、
これまでに出された数々の不可解な最高裁判決、
反TPPを選挙公約に掲げて当選したのにTPP協定を批准した政治家など、
それらが生まれる原因はそうした法的構造にあると考えると、合点がいきます。
そして、そうした法的構造によって生まれる矛盾を隠すために、
「戦後日本」という国は、国家のもっとも重要なセクションに分厚い裏マニュアルを必要とするようになりました。(p80)
それが、
①最高裁の「部外秘資料」②検察の「実務資料」③外務省の「日米地位協定の考え方」(p81)
という3つの裏マニュアルです(正式名称は割愛します)。
こうした形で司法への違法な介入がくり返された結果、国家の中枢にいる外務官僚や法務官僚たちが、オモテ側の法体系を尊重しなくなってしまった(p84)
そうで、つまり国内法を軽視するようになってしまったというのです。
結果、今の日本は、 天皇なき天皇制を利用する 米軍+官僚 が、
月2回の日米合同委員会において日本の政策を決定。
そこにおける法的構造は、 憲法 > 条約および密約 > 法律
という、日本国憲法という国の最高法規の存在は無視され、
国内にある法律よりも条約や密約を尊重する状態なのです。
この法的構造が、米軍基地以外のことでも適用されるようになってしまったことが、
現在の日本政府の暴走=大半の日本国民の声を無視した政策を強行する状態を招いています。
結果、日本の国益や日本国民の権利よりも、アメリカの国益や米軍の権利が尊重されている
その1つが原発です。
砂川裁判で最高裁が憲法判断をしないとした、
「安保条約のようなわが国の存立の基礎に重大な関係をもつ高度な政治性を有する問題」(p85)
には原発問題も含まれており、
その分野においては法的なコントロールがおよばず、米軍基地問題と同じように、
国内法である法律そして日本国憲法よりも、条約や密約が尊重される法的構造となっているのです。