引き続き、『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(矢部宏治、2014)から引用します。
通常、他国との間に密約があり、それが自国に不利益をもたらす可能性が明らかとなった場合には、
その密約が当時の状況から考えて、やむをえないものだったのか。交渉担当者はほかの選択肢についてきちんと検討したのか。その密約は結果として国益を害さなかったのか。そうした点について、第三者委員会がくわしく検証するはずです。
ところが、日本の場合、ほとんど調査することがなく、調査したときも「有識者委員会」とよばれる御用学者主導の集団が、「合意文書は存在したが、現実の状況には影響をあたえなかった」などという非論理的な結論を、まともな証明もなしに出してそれで終わりなのです。(p110、111)
そんな非論理的な結論がまかり通っていた自民党政権時代を経て、
民主党政権時代に、戦後結ばれた日米安保に関する密約について調査しようとしました。
ところが、
外務省の委嘱を受けた「有識者委員会」は、厳密な意味での密約はなかったとする報告書(いわゆる『密約』問題に関する有識者委員会報告書)をまとめ、調査は幕引きとなりました。アメリカ側が公文書を開示し、そうした密約があったことはわかっているのに、なぜそんな結果になってしまうのか。
(中略)
その理由は「有識者」委員会の座長である北岡伸一・東京大学教授(当時)が展開した奇妙な論理にありました。(p111)
この北岡伸一という人物が、密約に関して意味不明な定義を展開して強制的に幕引きしているのです。
条約に関しても意味不明な発言をしていて、
それ自体は「一片の紙切れにすぎない」。そのことを理解しない条約論議(つまり、条約や密約の内容がすなわち現実そのものであったかのような歴史解釈)は「机上の空論」であるとのべています。(p112)
しかしながら、
過去の条約や密約に書かれている内容が、現実の世界でそのとおり起こっていれば、それらの取り決めが現実に拘束力をもっているに決まっています。たとえ密約であっても、国と国との取り決めは正式に破棄しないかぎり効力をもちつづける。それが国際法の「イロハのイ」なのです(p113)
と著者は指摘。
「日本の国際政治学の最高権威」という北岡伸一氏が言うとおり、
条約や密約の内容が現実に存在することが机上の空論、なのであれば、
米軍機や米兵による、日本国民の人権を無視する数々の違法行為について、
日本政府は、米軍やアメリカに対して徹底的に抗議すべきです。
しかし、それをしない・できていないでいるのを見ると、
条約や密約の内容が現実に存在する、もしくはアメリカに何か弱みを握られている、と考える以外に説明がつきません。
「日本の国際政治学の最高権威」が意味不明な論理を展開して、対米隷属の姿勢を貫くのはなぜなのか?
それは日本政府が、日本の国益や日本国民の命よりも米軍やアメリカの利益を優先している理由、にも繋がっていくことだと思います。