行って良かった!顔真卿展

先週から上野の東京国立博物館で開催されている、特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」(1/16~2/24)へ行ってきました。

この特別展では中国有名書家である顔真卿(がんしんけい)、ならびに彼に関わる有名書家の書が数多く展示されており、この展示によって訪日中国人が増えているほどの人気ぶりです(実際に中国の方が多い印象でした)。

通常は台湾の故宮博物院に収蔵され、現地でも数年に1度しか見られない文化財や、日本各地(台東区立書道博物館、三井記念美術館、東京・京都・奈良国立博物館、淑徳大学書学文化センター等)にある国宝・重要文化財が集結した今回の展示は、なるほど、海外からも見に来る価値があるものだと思いました。

開館は9時半。入口右側にあるチケット売場でチケットを購入してから敷地内へ入ります(大人1600円)。平日午前中のせいか、無人・有人売場とも並ばずに買うことができました。事前にコンビニ等で買っておくこともできますが、その場合は発券に手数料(100円+税金)がかかるので現地で購入しました。

東京国立博物館にはいくつか館がありますが、顔真卿展は入って左奥の平成館で開催されているので、東京国立博物館敷地内に入ってからそこまで歩きます(入口正面にあるのは本館です)。

平成館へ入ったら、係員にチケットを見せてエスカレーターで2階へ上がり(展示は2階で行われています)、展示入口付近で借りられる音声ガイドを550円で借りて鑑賞しました。

玄宗皇帝筆「紀泰山銘」(きたいざんめい)を除いて撮影禁止の館内には、美しい書が多数展示されており、見どころ・読みどころ共に満載。そのおかげで鑑賞するのに3時間以上もかかってしまいました(笑)

顔真卿展であるとはいえ、顔真卿以外にも「蘭亭序」で有名な王羲之、「九成宮醴泉銘」で有名な欧陽詢、虞世南、褚遂良、柳公権、空海などが記した国宝・重文レベルの書がズラリと並んでおり、見るもの・読むもの共に膨大だったからです。

1番の見どころは、展示中盤にある「祭姪文稿」(さいてつぶんこう)。

これは世界で数点しか現存しない顔真卿の肉筆であり、安史の乱における味方の裏切りによって、父親とともに残酷なタヒを遂げた顔真卿の甥である顔季明を供養しようと書かれた書の草稿です。当時、顔季明とその父以外に数十人もの顔家の人間が残虐非道な亡くなり方をしており、それに対するはらわた煮えくり返るような感情が書に表れています。

最初は淡々と書かれているものの、中盤以降は「なぜ顔季明があのような亡くなり方をしなければならなかったのか!」という堪え難い感情が書に表れており、読んでいて何とも言えない気持ちになりました。同時に、音声ガイドによる見事な現代語訳の朗読を聴いていると、当時の顔真卿が覚えていたであろう感情が伝わってくるかのようです。

ただこの「祭姪文稿」、混雑のために見るまでに10分ほどの待ち時間があるだけでなく、せっかく順番がきても立ち止まって見れないので十分には堪能できません。ゆえに一旦間近で見た後、列を離れて再度音声ガイドを聴きながら後ろから眺めていました。

顔真卿は長安にある訓詁(くんこ)と書法を家学とする名家に生まれ、唐時代4人の皇帝に尽くした官僚でしたが、稀に見る忠臣であったがゆえに曲がったことが嫌いな性格が災いして、何度も地方へ左遷されていたようです。ただ、顔真卿の書はその性格を表すかのように、1本筋の通った力強さが感じられるものであり、書を見ているだけで心が奮い立つようでした。

そんな顔真卿の書が、楷書で名高い「王羲之を超えた名筆」といわれる所以は、顔真卿が亡くなった後の宋時代に、その人格および書(感情を込めた魂の筆)が評価され、後世からも絶大な支持を受けるようになったことが影響していると解釈。

大塚国際美術館は、本物の絵画がいかに素晴らしいかを知れる場所でも書きましたが、書でも絵でも本物には力があるので今回の鑑賞も疲れました(良い意味で)。でも大満足の展示内容だったので、西安碑林博物館で見た石碑を思い出したほどでした。

今回、日本で台湾所有文化財を見られたことには(国外で見られるのは日本が2度目で、1度目はアメリカ)ただただ感謝です。この展示の構成を考えられた方々、展示された方々、および展示実施までこぎつけた多くの方々および関係組織に、心から感謝申し上げます。

来月2月24日まで開催されているこの特別展、金・土曜日は夜9時まで開館、その他曜日は夜6時までの開館です(ただし入館は30分前まで)。月曜日は休館ですが、2/11は祝日のため開館していて2/12が休館です。上野公園の夜は暗く、午後は館内が混雑するようなので、午前中が比較的鑑賞しやすいのかなと思います。

東京国立博物館HPにおけるこの特別展の説明文を、以下に転載しておきます。

中国の歴史上、東晋時代(317–420)と唐時代(618–907)は書法が最高潮に到達しました。書聖・王羲之(おうぎし、303–361)が活躍した東晋時代に続いて、唐時代には虞世南、欧陽詢、褚遂良(ぐせいなん、おうようじゅん、ちょすいりょう)ら初唐の三大家が楷書の典型を完成させました。そして顔真卿(がんしんけい、709–785)は三大家の伝統を継承しながら、顔法と称される特異な筆法を創出します。王羲之や初唐の三大家とは異なる美意識のもとにつちかわれた顔真卿の書は、後世にきわめて大きな影響を与えました。
本展は、書の普遍的な美しさを法則化した唐時代に焦点をあて、顔真卿の人物や書の本質に迫ります。また、後世や日本に与えた影響にも目を向け、唐時代の書の果たした役割を検証します。

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