体に必要な細菌まで失ってしまう消毒・殺菌の怖さ

近年は食中毒の危険性から、どこでも消毒・殺菌が定番となっています。

が、消毒や殺菌によって体に必要な細菌まで奪い取り、それによってもたらされる危険性についてはあまり知られていません。

これまで繰り返し『人類が生き残るために』(浅野晴義、1979)から抜粋してきましたが、最後に細菌の役割という項目を引用して終わりたいと思います。

人間の皮ふには、数多くの微生物が住んでいる。一センチ平方の皮フには、およそ三百万個ほどの何種類かの細菌が住んでいて、調和のとれた世界を形づくっている。彼らの栄養となっているものは分泌される脂肪であり、汗であり、死滅した皮フの細胞である。彼らは、普段はまったく無害であるばかりか、病源菌の侵入に対して皮フをまもる役割を果している。この点は粘膜でも同様であって、口の中や大腸には特に多数の細菌が住んでいる。

近代医学は、抗生物質の発達と共に、病源菌を殺すことばかりを考えるようになってしまった。一寸した風邪や下痢でも、すぐに抗生物質が使われる。そのため、本来は人間の皮フ、粘膜をまもってくれる細菌群のバランスが失われ、抵抗力の低下した、不健康な状態を作り上げる結果となる。

無菌状態で飼育された動物は、一般の生物社会では生きてゆけない。婦人科、内科領域で非常に増えているカンディダ症なども、抗生物質の濫用で、常在細菌を殺してしまうためと考えられる。

こうした点から考えると、健康な人間はむやみに消毒、殺菌をしない方がよい。抗生物質は、必要やむを得ざる場合にだけ使用すべきである。学校給食のときに、逆性せっけんなどで手を消毒するのはもやしっ子を育てるようなもので、むしろマイナスになり得る。厳重な消毒は、皮フが傷ついた時と、伝染病の流行する時だけで充分なのである。(p69)

現代には、アルコール消毒スプレーやウェットティッシュ、薬用石鹸○○ーズ、ハンドソープ〇〇イ〇〇イ等、身体の表面を消毒・殺菌する品が溢れています。

もちろん職業柄、使用が不可欠な場合も多いと思うので、一概に良くないとはいえません。

ただそうした消毒・殺菌によって、元々体の表面を守ってくれている細菌まで取り去ってしまい、逆に病気にかかりやすくなる危険性があることは、もっと知られる必要があると思います。

浅野氏も指摘しているように、子どもの頃から体を消毒・殺菌することは、わざわざ病気にかかりやすい体にしているだけなので、不可欠な場合以外は、消毒・殺菌はできるだけ避ける必要があると思っています。