『知られざる真実―勾留地にて―』対米隷属でない知識人

買ったまま放置していて最近読んだ本に、『知られざる真実―勾留地にて―』(植草一秀、2007)があります。

著者のことは、10年以上前にテレビの情報番組でコメンテーターとして出ていたのを見たことがありますが、手鏡事件でいきなり逮捕され驚いた覚えがあります。

この本を読んだ印象では、この人も権力に立ち向かったがためにハメられた、いわゆる冤罪を着せられた人だと思いました。

実際こういう形で政治犯を冤罪にするケースは少なくなく、三権分立ではない日本の国家権力から簡単に社会的制裁を加えられてしまいます(逆に、クロでも後ろ盾があれば無罪になりますが)。

この本を読むと、勾留中に支援してくれた多くの人に対する著者の気持ちが分かる反面、権力に立ち向かうことは命がけということが感じられます。

本書では、小泉政権時代に起きた諸々の事件の真相も書かれていますが、逮捕されてしまう政治家・官僚・経営者・知識人は決まって、「反アメリカ」要素を持った人であることが指摘されていました。

小泉政権時に起きた、

景気の深刻化、企業倒産の広がり、銀行の貸し渋りなどにより、日本企業の資金力は枯渇した。この時期に小泉政権は海外諸国に「対日直接投資倍増計画」を政策公約として示した。日本政策投資銀行などの政府系金融機関が資金援助して外国資本による日本の実物資産底値買い取りを積極的に支援した。

生命保険、損害保険、銀行などが次々に外国資本の手に渡った。郵政民営化を渇望したのは米国だ。米国は郵便貯金、簡易保険の350兆円の資金に狙いをつけ、米国の意向を反映した民営化法案を小泉政権に策定させた。日本の金融市場開放と競争促進政策は方向として間違っていない。だが実行に際しては日本国民の利益を優先するのが当然だ。私が異を唱えたのは、小泉政権が日本国民の利益ではなく、米国政府や米国企業の利益を優先したことだ。(p48)

との記述通り、小泉政権時代には日本国民の利益を損なう政策が数多く行われました(安倍政権でも行われていますが…)。

ただ当時小泉純一郎氏が、少しでも反アメリカ要素を匂わせる行動をとっていたとしたら、田中角栄氏やその他政治家のように、失脚させられるか消されるかしていたと思います。

日本では、米国政府や米国企業にとって不利益な行動をとる政治家・官僚・経営者・知識人は、社会的制裁を受けることが決まっているので、その構造自体が無くならない限り、日本の対米隷属姿勢を変えることはできないのです。

その構造は、日本が敗戦国であり、1945年から1952年までの占領期の支配構造を現在でも引き継いでいるからだといわれています。

ただ、トランプ政権発足後にジャパン・ハンドラー達が排除され、アメリカの日本におけるマスメディア支配の総元締めである「電通」が批判されるようになってきた所を見ると、少しずつその構造も変わりつつあるのかもしれません。

そんな状況下で、何度冤罪を着せられても権力迎合に走らず、強い決意と明晰な頭脳をもって社会に真相を発信し続けている著者が書いたこの本は、危険な内容が詰まっていますがそれだけ価値あるものだと思います。

堤未果氏の著書で指摘されていた部分と被るところもありました。

無知な私にとっては特に学びの多い本ですが(何度か読まないと理解できません…)、精神的ダメージの大きい衝撃的な内容ばかりなので、いっぺんに読まず少しずつ読んでいるところです。

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