『日本が売られる』㉚政府が介護報酬を上げないため介護事業者は次々倒産、介護が贅沢品になる未来

読んで下さる方がいるため書き続けてきましたが、徐々に気力が続かなくなってきたのと、㉚とちょうどキリがいいので、今回で『日本が売られる』(堤 未果、2018)の引用は終了しようと思います。

残りの、労働問題、〇ソナ中抜き問題、移民50万人問題、公立学校の民営化問題も書き記すべき内容ですが、名前を見るだけで気分が悪くなる政治家や学者面した人間が、多数関係していて悪口の羅列になりそうなので、、、止めておきます。

それでは、『日本が売られる』(堤 未果、2018)から引用させていただきます。

超高齢社会である日本では、要介護(要支援)認定者数が増え続けており、2021年1月末時点で679.2万人(男性が215万人、女性が464.2万人)となっています(介護保険事業状況報告の概要 厚生労働省)。

一旦介護が始まると、5年から10年の介護期間の間に、約500万~1000万円の費用がかかるという(p205)

介護ですが、個人差はあるにせよそんな過酷労働を介護保険制度ができるまでは、主に女性が1人で自宅で行っていたことを考えると、体力的精神的な壮絶さを想像するだけでしんどくなります、、、

親戚の女性で、義母を20年以上自宅介護した人を知っていますが、犠牲になった時間・労力・精神はとてつもなく大きく見え、場合によっては子どもが犠牲になる部分も見えていたため、その苦労は計り知れなかっただろうと思います。

また以前の職場の同僚にも、義母を10年自宅介護した女性がおられましたが、「こんなこと言うとおかしいと思われるかもしれないけど、亡くなって正直ホッとしたんです」と話してくれたことがありました。

その一言に、経験した人間にしか分からない介護の過酷さが詰まっている気がしました。

幼少期からこれまでに見聞きしてきた介護を巡る環境では、「施設へ入れるのは可哀想」という発言をする人の大半が、口は出すけどお金は出さず自分では介護をしない人達だったため、介護保険制度ができたことは本当に良かったと思います。

ただ制度ができても、以下に書いた介護難民のように、居住地によっては今後制度を利用できない人が大勢出る可能性も生まれています。

日本社会では、2000年に公的介護保険制度が作られ、年間600万人以上が利用していると言われていますが、受けられる公的サービスには2種類あります。

最長3カ月でリハビリと医療ケアを提供する「介護老人保健施設」と、中度から重度の介護を必要とする高齢者が、介護と生活支援を受けながら生活できる「特別養護老人ホーム」(特養)だ。

前者はリハビリが終われば出なければならないが、後者の特養は一旦入れば、最後までそこで生活できる。特養は入居時の一時金もなく、月々の利用料も約10万円、食費や介護、住居費は半額が税金控除の対象だ。

全国に8900施設以上あり、過疎地の住民が高齢になった時、住み慣れない都市部に引っ越さずとも地元で暮らし続けられるよう人口の少ない市町村にも必ず1施設は設置されている(p205)

そうです。

これは、

公的介護サービスがなく、命の沙汰も金次第、「死ぬのはあなたの自己責任」の貧困大国アメリカ国民に言わせると、「夢のようだ」と羨ましがられる制度(p205、6)

だそうですが、

厚労省のデータによると、現在日本で特養に入りたくても入れないキャンセル待ちの高齢者は36万6139人(2016年)と、長蛇の列をなして(p206)

いる状況にあります。

それだけ介護難民が出ている理由は、

受け入れ側のスタッフが足りなすぎる(p206)

ためです。

2018年7月27日。独立行政法人福祉医療機構が2017年度に全国3304特養施設に行った調査によると、64.3%の施設が人手が足りず、26%の特養では平均11床もベッドが空いているのに、人手不足のため新規入居者の受け入れを断っていた。(p206)

介護スタッフは、日本全国津々浦々、どこもかしこも足りていない。(p207)

人が集まらない最大の理由は、介護スタッフの労働条件が他の職種に比べて最悪だからだ。(p207)

「安い、汚い、きつい」の3点セットと言われ、保育士同様、他の職種より月額給与は平均10万円も安い。人が足りないため1人の介護士にかかる負担が群を抜いており、長時間労働やサービス残業は当たり前、休日もろくに取れず、入居者からの暴力・暴言に耐え忍ぶ毎日で、心身を病むスタッフが絶えないという声が現場から聞こえてくる。(p207)

こうした状況なので、本来であれば政府としてはまず人手不足を解消するために、介護士の賃金を上げ、その労働環境を少しでも改善するような政策を行うべきです。

しかしながら政府は、

介護士の労働条件を改善する代わりに、彼らを雇っている介護事業者の方を締め上げ(p208)

ました。その結果、介護サービス事業者の倒産が相次ぐことになってしまったのです。

2018年4月9日。東京商工リサーチは、2017年度の介護サービス事業者の倒産件数が過去最多の115件になったことを発表した。この数字は倒産件数のみで、実際は廃業・撤退を進めている予備軍もかなりの数にのぼる。(p208)

倒産しているのは半数近くが訪問介護サービスで、その8割がスタッフ10人未満と、中小の介護事業者ばかり(p208、9)

だそうです。

訪問介護サービスの倒産件数が多い最大の理由は、

政府が介護施設に支払う「介護報酬」(3年ごとに改定)をどんどん減らしているからだ。特に2015年には、介護報酬を全体的に減らす中、特に「訪問介護」分野の報酬を平均以上にバッサリ減らしている(p209)

ようです。

大手ゼネコンが政府から老人施設の建設を受注して潤っている一方で、実際にハコモノを作った後は、スタッフ不足で入居者を受け入れられない。賃金を上げて人を入れようにも、政府に介護報酬をどんどん減らされる。経営が立ちゆかなくなり中小事業者から次々に倒産という、恐るべき負のスパイラルに陥っているのだ。(p209)

2017年11月。全国老人保健施設協会や日本看護協会など全部で11団体が、「介護報酬を上げてほしい」という過去最多数の署名180万人分を政府に提出した。(p209)

それだけ介護の現場は過酷な労働環境になっているわけです。

介護報酬を上げない限り、高齢化大国日本の未来が絶体絶命なのは、火を見るよりも明らか(p209、210)

と著者も指摘しています。

とはいえ、日本人の日本人による日本人のための政治を行わない今の政府によって、

介護現場が発した180万人分のSOSは、この間、着々と進められていた規制改革推進会議の「全てに値札をつける民営化計画」の前に、かき消されて(p210)

しまいました。

介護職員の処遇改善については昨年、今年10月以降に介護報酬を臨時改定して対応すると、厚生労働省が発表したため、介護職員の収入については先月から始まった約3%(月額平均9000円相当)の引き上げ幅が今後も継続されるようです。

とはいえ、その程度の賃金上昇では、これから混合介護を解禁する自治体が増えてしまうと(現在解禁しているのは豊島区のみ)、事業者は倒産しないために、

報酬の少ない保険適用サービスだけを使う客より、100%自己負担の保険外サービスをたくさん利用してくれる経済的余裕のある客を増やそうとする(p216)

ため、結果として

介護保険でカバーできるサービスは減り、100%自己負担のサービスがメニューに増えてゆく(p216)

ことになります。

そして、

介護士と介護事業所不足が最も深刻な東京都や愛知県(どちらも国家戦略特区)などの都市部を中心に、金銭的余裕のある人しか介護サービスを受けられない状態になってゆく(p216)

ことが予想されるのです。

現在、混合介護を行っている豊島区で上手くいく事業者が増えた場合は、モデルケースとして今後、

混合介護は全国に広がってゆき、人手を増やす余裕のない過疎地の介護施設は、どんどん消えてゆく(p216)

可能性が高いです。

政府は、社会保障財源が足りないと言って消費税は上げながら、外資を含む大企業には減税し、マスク、オリンピック、クーポンなど大企業が中抜きできる分野にかける財源は莫大に確保します。

国民ではなく、外国資本を含む大企業やアメリカ政府を見て政治を行っているのがよく分かります。

そんな状況でもめげずに、ほぼ毎日せっせと首相官邸へ意見を送り続けていますが、、、農水省、厚労省、消費者庁など各省庁の方向性は変わらず、危険な法案は通過するし、週1で憲法審査会が開かれているしで絶望度が増しています。

昨年から宮沢氏のtwitterを読んでいますが、最近見た「日本は好きですが、失望しています。二度と復活しないだろうと思っています。いずれなくなる国だとすら思っています。」という呟きが、今年に入ってからの自分の気持ちと全く同じだったので、自分だけではないことに救われました。

信頼できる人と同じ気持ちだっただけで救われるなんて、ずいぶんめでたい人間かもしれませんが、そういう身の回りにある小さなプラスを積み重ねる方法が、情報統制された酷い社会を前向きに生き抜くには効果的だと思っています。

状況は変わっておらずむしろ日に日に悪化している感じですが、希望を捨てず、自分ができることを日々コツコツとやり続けるつもりです。