最近読んだ『チェルノブイリの真実』。
チェルノブイリ原発事故から10年が経った、1996年に出版された本です。著者の広河隆一氏のことは、約10年前にチェルノブイリ写真展で知りました。
当時は、チェルノブイリが旧ソ連(現ロシア)にあるというだけで、具体的な位置さえ知りませんでしたが、今地図で見るとウクライナとベラルーシの間に位置していて、ヨーロッパ各国に近いことが分かります。
周囲は、ポーランド、チェコ、ハンガリー、フィンランド、デンマーク、ノルウェー、ドイツ、オランダ、ベルギー、オーストリア、イタリア、ギリシャ、スイス、フランス、トルコなど日本人観光客が多く訪れる国ばかり…
出典:http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-2869.html
中国で頻繁に核実験が行われていたときにも、シルクロードを旅するというNHK番組が放送されていましたが、チェルノブイリ原発事故後も多くの日本人観光客がヨーロッパ各国を訪れていた印象があります。
そして、ヨーロッパ各国はチェルノブイリによって放射能汚染された食品を、当時から今に至るまで日本に多く輸出しています…
『人類が生き残るために』(浅野晴義著 日本消費者連盟 1990 17項)によると、当時、
「日本の厚生省の基準では、輸入食品中のセシウム134・137の含有量が1kgあたり370ベクレル以下ときめ、抜きとり検査を行って基準値を超えた異常値を示すものを輸出国に送り返している。
しかし、この安全基準値370ベクレルというのも、ヨーロッパ諸国が設定した数値にあわせたにすぎず、明白な根拠のあるものではない。国によっては、さらに条件が厳しく、シンガポールのように放射能検出値ゼロを輸入条件にしている所もある。
日本の検疫所で、許容基準値を超えたトルコからの香辛料を送り返そうとしたら、積み荷をカナダへ送ってくれと返事がきたことがあるという。カナダの香辛料の規制値は3000ベクレルとなっているからである。
ヨーロッパでは、食品の放射能汚染がひどいため、最近では、基準値をあげようとする動きもあるという。こうなると政治的な安全基準値となる。
この記述からは、福島原発事故後の日本政府対応と当時のヨーロッパ各国政府の対応が似たようなものであったことがうかがえます。
ところで、この本には広河氏がチェルノブイリ原発事故後に周辺地域へ14回足を運んで掴んだ事実が書かれていますが、読んでいて怒りと虚しさがこみ上げてくる内容です。以下は内容の一部。
- 原発産業を存続させるために様々な組織が、一般人に事実を隠し被爆させ続けていること
- 原発事故は人為的なミスではなく設計上のミスであること
- 原発から出続けるゴミの最終処分場がないこと
- そのゴミが放射線を発しなくなるまで最低10万年かかること
- 原発を稼働させなくても電力は足りること
が、恐ろしいのは福島原発事故が起きて6年が経過した今、この内容がより身近に感じられるところにあります。
「はじめに」のところで書かれている、「次のヒロシマ、次のチェルノブイリが刻一刻と準備されていることは、誰の目にも明らかだろう」という部分がありますが、それがまさに2011年に3月11日に起きた福島原発事故であり、それが起きるべくして起きた事故であったことを物語っています…
今日本で起こっていることは、当時チェルノブイリ周辺地域で起こっていたことと同じで、政府は真実を隠蔽し、医療関係者は政府の圧力によって情報開示を拒否し、子どもたちの身体には重大な健康被害が引き起こされています…
チェルノブイリ原発事故で全世界が汚染されたという事実を、いまなお原発を抱える国・原発を販売する国・原発によって利益を得ている機関は認めていません。
が、植物、動物、そして人間の体にはその影響が着実に表れており、世界中の原発から今も垂れ流されている放射性物質によって、より一層その負の連鎖が強化されているように思えます。