『日本が売られる』⑱「家畜の餌は輸入すること」と法律で定められていることに驚愕

の続きです。

引き続き、『日本が売られる』(堤 未果、2018)から引用します。

政府が触れない重要な要素が一つある。

国が農業を守るレベルが、EUと日本では桁違いなのだ。

例えばフランスの農家は収入の9割、ドイツは7割を政府の補助金が占めている。政府が守ってくれるから、自然災害などで価格が下がっても農家は潰れない。だから乳製品の価格でも、世界トップのニュージーランドと対等に競争できる。(p89)

一方、日本はどうだろう?

1963年に42万戸あった酪農家はどんどん減って、今では1万7000戸だ。国内バターの9割を生産している北海道では、年間200戸の酪農家が消えている。

減っているのは「高齢化と後継者不足が原因」などと言われるが、それ以前に日本は他国と比べて農家をちゃんと守っていない。農家の収入のうち、政府補助金はわずか4割弱なのだ。(p90)

戦時中や戦後を見てもそうですが、日本政府は他国政府に比べて、圧倒的に自国民を守らない印象があります。

農地は自国民の食の安全保障だけでなく、国土の安全保障にとっても重要だ。海に囲まれた日本と違い、隣国と地続きで常に国境を意識するEU政府は、そのことをよく分かっている。(p89)

彼らは93年の農業交渉で関税を引き下げる際も、安い輸入品との競争で国内農家の所得が減らないよう、政府が補助金を支払って守ることにした。今回のように他国と関税引き下げ条約を結ぶ際も、自国の農業は政府がしっかり補助金でガードする。(p89)

本来であれば、ヨーロッパ諸国のように第一次産業などは政府が税金で守るべきだと思うのですが、日本政府はそれをせず逆に他国に売り渡している状況です、、、

生産費の半分を占める、餌の値上がりも深刻だ。

1961年に日本政府が出した「農業基本法」で、「家畜の餌は海外から輸入すること」に決められた。〈これからは、米や麦よりバターやミルク、チーズが売れる。畜舎を広げてたくさん牛を飼うべきだ〉

そう考えた政府は農家に安い輸入飼料を使わせ、機械化と化学肥料とで、日本の酪農を大規模化するよう仕向けてゆく。

その結果、米国産トウモロコシを中心に、餌の9割を輸入に頼るようになってしまった。

「他国の食をアメリカに依存させよ」は、アメリカの外交戦略だ。ここから日本の畜産の運命は、アメリカの手に握られてゆく。(p90、91)

戦後、密約なども含めて国民が知らない裏取引が数多くあったのかもしれませんが、いろいろ分かってくるにつれて、戦後から今までずっと、アメリカ主導でアメリカの利益だけを増やす政策が、日本政府によって数多く進められてきたようです(圧力に屈した結果だったのかもしれませんが、、、)。

中でも、農業基本法で「家畜の餌は海外から輸入すること」と決められていたことを知り、驚愕しました。

これでは畜産業を国産化していると言っても、餌を海外に依存しているため、何らかの事情で餌が異常に高騰したり、餌を輸入できなくなったりすると、国内の畜産業は立ち行かなくなってしまいます。

その結果、危険性のある海外産の肉類や乳製品、卵類を、法外な価格で輸入させられる可能性だってあるのです。

また、餌を海外に依存している場合は、遺伝子組み換え飼料のように、例え危険性のある食品でもそれしか生産していないと言われてしまえば、それ以外に輸入する選択肢が無くなってしまうため、もはや畜産業における安全性は捨てている、と言っても過言ではない気がします。

第一、国産より安いといっても、穀物の市場価格は不安定で、為替レートや運搬に使う石油の価格上昇によって、すぐに値段が上がってしまう。アメリカの不作で高騰したトウモロコシの飼料価格は2004年から10年で3倍に上昇、これに2012年からのアベノミクスで加速した円安のダメージが重なり、酪農家はバタバタと倒産している。(p91)

日本は人口減少社会で食の好みも多様化しているため、今後は今よりもバターやミルク、チーズなどの乳製品や肉類、卵も売れなくなると思います。

そう考えると、安い輸入飼料を使わせるのではなく、国産米などの国産食品を原料とした国産飼料を使わせるように制度化し、大規模化した酪農を小規模化しても維持できるようきちんと税金で補助して、安全性の高い国内畜産業を守る方向へ変えていく必要があると思います。

1965年以降、酪農家の95%が農協に加入して指定団体制度を利用していましたが、この制度が規制改革委員会によって2017年に廃止され、中小の酪農家は弱い立場となってしまいました。

指定団体制度についてです。

他の農産物と違い、日持ちがしない生乳はすぐ売らなければならない。そのため、流通経路のない中小の酪農家は、乳業メーカーに売る時にどうしても立場が弱くなる。

そこで交渉力のない小規模酪農家が買い叩かれないよう、間に代理人(農協)を入れていたのだ。

農協が、各酪農家が作った生乳をまとめて買い取り、彼らの代わりに複数メーカーと団体交渉して販売する。これなら零細農家が大企業と個別に交渉して足元を見られる心配もない。

乳製品は飲料用、加工乳用など、用途によって価格が違うので、この差を国が補助金で埋めている。農協は生乳を全量買い取る代わりに、どの用途で売られても差が出ないよう、メーカーへの販売代金と国からの補助金を両方預かり、各酪農家には出荷量ごとに代金を支払ってくれるのだ。

共同販売することで、腐りやすい生乳の検査や保管、運搬などの流通コストも節約できる。(p91、92)

この指定団体制度が規制改革委員会によって廃止されたのを見ると、日本政府が中小の酪農家を守る政策を行わないのは、アメリカ政府だけでなく国内大企業からの圧力も大きいのかなという気がします。

自由貿易の旗を振りTPPやEPAを進めつつ、国内を守る規制や補助金という防壁を自ら崩し自国産業を丸腰にする、そんなことをしているのは日本政府だけだ。(p96)

アメリカやEU、オーストラリアでは、

他国には、「ビバ!自由貿易」「関税ゼロで自由な世界市場を!」などとグイグイ自由化を迫りながら、食の安全保障が外資に食い尽されないよう、自国産業だけは補助金や規制でしっかり守る(p95)

形を取っているのですから、、、

乳製品、特に牛乳に関しては、世界中が放射能に汚染されている状況と、それ以外の健康への悪影響もあるため、できるだけ摂取しないほうがいいと認識しています(特に子ども)。

しかしながら、国内の酪農家や乳製品を扱う企業、乳製品が好物な人々にとっては重要な問題です。

また、日本の未来を考えるのであれば、自国産業、特に中小企業を守る政策が不可欠であると考えるので、政府の決定や官僚のやり方がおかしければ、国民は声をあげ続けなければならないと思います。

間違っていることに対して何も言わず何もせず、「政府の方針だから」と従い続けるような人間ではいたくないな、という気持ちが強くなっています。

にほんブログ村 ライフスタイルブログへ にほんブログ村 ライフスタイルブログ セミリタイア生活へ ライフスタイルランキング
社会
シェアする