『原子力発電で本当に私たちが知りたい120の基礎知識』①原発を増設させるために、深夜電力消費量を増やしてきた

『原子力発電で本当に私たちが知りたい120の基礎知識』(広瀬隆 藤田祐幸、2000)。

この本を初めて読んだのは、約20年前。

1986年に起きた、チェルノブイリ原発事故の写真展がきっかけだったと思います。

その数年後、鎌仲ひとみ氏の「六ヶ所村ラプソディー」というドキュメンタリー映画や、岡山県人形峠のウラン煉瓦の存在を知りましたが、、、

それ以降、福島原発事故が起きるまで原発に関してはほぼ無関心でした。

それが事故によって放射能汚染を知るようになり、「上関原発を建てさせない祝島島民の会」へカンパするように。

今年に入ってからは、中国電力が上関町(かみのせきちょう)で使用済み核燃料を一時保管する「中間貯蔵施設」建設に向けて動き始めたこともあり、改めて原子力発電について考えるようになりました。

この本が発行されたのは20年以上前なので、現在とは異なる部分もあると思いますが、

タイトルにもあるように120項目に分かれているため読みやすく、疑問が少しずつ解消されていく感じです。

項によっては理解が難しいところもありますが、、、一般人の私でも読みやすい文章でした。

ただ20年ぶりに読みながら、、、

こんな危険な原子力政策を(再処理工場や高速増殖炉も含めて)、地震大国である日本で推進してきた利害関係者に対して憤りを覚えました。

もっとも頭にきたのは、深夜最小電力以下の電力(=ベースロード電力)消費量を大幅に増やすことにより、原発増設を実現させてきたこと

原発は巨大なシステムであり、原子炉の出力や冷却水の温度や圧力などが全体として微妙なバランスが崩れると、大事故を起こす危険性があるため、出力を需要に応じて自由に変動させることができない。そこで、原発は深夜最小電力以下の電力の供給にしか使うことができない。(p31)

そのため、原発を増設したい原子力産業は官民一体となって、原発によって供給される深夜電力を使わせるように取り組んできたのです。

深夜電力消費量を増やすために官民が行ったこととして、この本であげられているのは、深夜電力料金の大幅値下げ、「電気温水器」「電気自動車」「エコアイス」の大普及運動、巨大な揚水水力発電の建設などです。

そう考えると、24時間営業店や一時期流行った「オール電化住宅」も、深夜電力消費量を増やすためのものだったといえるのでは

とはいえ、

でも書いたように、

原子力発電は、放射性廃棄物、温排水、廃炉処理が必要な原発、動植物への放射能被害、官僚の天下り先、そして被爆者を大量に生み出すもの…

世界各地で起きた原発事故について知ると、日本だけでなく各国が原発事故について隠蔽していることが分かります。

原発には莫大な利権があり、軍需産業と同じようにケタ違いに儲かるため、産業として継続させたいがために、各国政府は真実(原子力発電の危険性、事故の被害状況など)を公表しません。

例え公表したとしても、事故発生から10年以上経過してからということが多いです。

日本だけでなく世界各地に原子力村があり、政治家・官僚・原子力関連企業・メディアが癒着して、原子力産業を斜陽産業にすることを拒み続けているようです。

【追記】約20年にわたって福島、浜岡、東海などで14基の原発建設を手がけた現場監督で、長年の被ばくによるガンのため1997年に58歳で亡くなった平井憲夫氏のインタビュー記事

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